2025年9月6日~7日にかけて、DRAXが主催するボディビル大会「DRAX CHAMPIONSHIP 2025」がソウルで開催されました。
今年で記念すべき5回目を迎えたこの大会は、単なるコンテストを超えて、ボディビルとフィットネス文化そのものの発展を願う場として、多くの選手と観客を魅了し続けています。
「なぜ、マシンメーカーがボディビル大会を?」と疑問に思う方も少なくないでしょう。
本ブログでは、DRAXがなぜボディビル大会を主催するのか、その背景にある想いや理念を紐解きつつ、大会の模様をご紹介していきます。さらに、「ボディビルの歴史はそもそもどこから始まったのか?」「海外ではどのように広がってきたのか?」といった文化的な背景にも触れていきたいと思います。そこには「マシンをつくる企業」と「マシンを使う人々」を繋ぐ新しい形の関係性が見えてきます。
ボディビルの歴史は、19世紀末のヨーロッパにさかのぼります。当時、筋肉を見せることは一般的ではなく、むしろ「身体を鍛えることは野蛮」という偏見さえ存在していました。そんな時代に登場したのが「近代ボディビルの父」と呼ばれるドイツ人医師のユージン・サンドウ(Eugen Sandow)です。彼は古代ギリシャ・ローマの彫刻に影響を受け、自身の肉体を鍛え上げ「筋肉そのものを芸術として表現する」という新しい価値観を世に広めました。サンドウは各地で肉体美を披露するショーを開催し、その活動がボディビルの起源となり、やがて世界的なムーブメントへと発展していきます。
「近代ボディビルの父」と呼ばれるユージン・サンドウの想いからボディビルの歴史が始まった。
時を経て1946年、カナダ出身の兄弟ジョー・ウイダー(Joe Weider)とベン・ウイダー(Ben Weider)が中心となり、「国際ボディビル連盟(IFBB)」を設立します。これにより、ボディビルは単なる個人の肉体披露から、「世界的な競技」として体系づけられていきました。彼らは雑誌や教材を通じてトレーニング理論を広め、多くの人々に「筋肉を鍛える文化」を浸透させた立役者でもあります。特にジョー・ウイダーは“フィットネス界のゴッドファーザー”とも呼ばれ、現代のトレーニング文化の基盤を築いた人物と言えるでしょう。
さらに1965年、ウイダー兄弟は伝説的な大会『ミスター・オリンピア(Mr. Olympia)』を初めて開催しました。この大会は、世界最高峰のボディビルタイトルとして瞬く間に地位を確立し、今なお世界中のアスリートと観客を魅了し続けています。アーノルド・シュワルツェネッガーをはじめとする数多くのスター選手がこの舞台から生まれ、ボディビルという競技の知名度を押し上げました。Mr. Olympiaは、筋肉を芸術の域まで高めた競技の象徴であり、「努力の結晶を世界最高の舞台で披露する場所」として、現在も絶大な存在感を放っています。
「ミスター・オリンピア」から数多くのスーパースターが生まれた。
こうした歴史的背景を持つMr. Olympiaは、派生大会として「マスターズ・オリンピア(Masters Olympia)」も誕生させました。これは40歳以上の選手に出場資格が与えられる特別な大会で、ベテラン選手たちが長年積み上げてきた肉体美と経験を披露する舞台です。2025年8月9日〜10日には、ついにそのMasters Olympiaがアジアで初開催となる東京で開催されました。そして翌8月11日には、世界のトップ選手が集結する『Tokyo Pro Super Show 2025』も開催され、まさに日本のフィットネスシーンにおける歴史的な1週間となりました。
この両大会のタイトルスポンサーを務めたのがDRAXです。Mr. Olympiaの歴史と精神を受け継ぐこれらの舞台をサポートすることは、DRAXが「ボディビルはフィットネスの原点であり、文化として広げる価値がある」と確信している証でもあります。サンドウが掲げた「筋肉は芸術である」という理念、ウイダー兄弟が推し進めた「ボディビルの大衆化」、そしてMr. Olympiaが築いた「世界最高峰の舞台」。その延長線上に、DRAXが支える現代の大会が位置づけられているのです。
DRAXは記念すべきアジア初開催のマスターズ・オリンピアでタイトルスポンサーを務めた。
ボディビルは、かつて限られた愛好者の世界にとどまっていた競技から、今や世界規模で注目されるフィットネス文化へと大きく成長を遂げています。国際ボディビル連盟(IFBB)を中心に、欧米をはじめとした各国で毎年数千を超える大会が開催され、競技人口は数百万人規模に達していると推計されています。特に近年では、健康志向やライフスタイルの多様化に伴い、純粋な筋肉美を競う「ボディビル」に加えて、より幅広い層に開かれた「メンズフィジーク」や「ビキニフィットネス」といったカテゴリーの台頭が、競技人口の裾野を飛躍的に拡大させています。
「フィジーク」、「ビキニフィットネス」、「スポーツモデル」等のカテゴリー台頭が競技人口の増加に寄与している。
アジア地域に目を向けると、韓国と日本では普及の度合いに明確な違いが見受けられます。韓国では、K-POPや映画産業と同様に「見せる身体文化」が根付いており、若い世代を中心にフィットネスジムの利用が爆発的に増加。ボディビルやフィジーク競技に挑戦するアマチュア選手が年々増え続け、大会数もここ10年で急速に拡大しています。観客動員数やメディア露出も高く、ボディビルはスポーツであると同時に「エンターテインメント」として社会に受け入れられつつあります。
対照的に日本では、ボディビルは依然として一部の熱心な愛好者に支えられてきた歴史があり、韓国ほど一般層への浸透度は高くありません。しかし、近年のフィットネスブームや健康志向の高まり、SNSによる情報拡散により、若年層を中心に大会観戦や競技への関心が着実に拡大しており、日本のボディビルシーンも今後さらなる発展が期待されています。
さらにアジア全体を俯瞰すると、中国、東南アジア、インドに至るまで、フィットネス市場は爆発的な成長を遂げています。都市部の若者を中心に「健康的で美しい身体を持つこと」が新しいステータスシンボルとなり、数多くのジムが誕生するとともに、ボディビルやフィジーク競技への挑戦者が急増しています。大会の規模や観客数も年々拡大し、国際大会にアジア諸国の選手が上位入賞する事例も増えており、もはやボディビルは欧米発祥の文化にとどまらず、アジアを含む世界中で新たなスポーツ文化として根付きつつあるのです。
ボディビルは観る者を熱狂させ、それはグローバルでスポーツ文化として根付き始めている。
こうした広がりは単なる競技人口の増加にとどまらず、健康産業やスポーツビジネス、さらにはファッションやエンターテインメント業界をも巻き込みながら、新しい市場を創出しています。
つまり、ボディビルとフィットネスは今後も確実に成長を続けるグローバル産業であり、アジアがその成長を牽引していくことは間違いありません。そして、このような世界的な潮流の中で、なぜDRAXがボディビル大会を主催し、選手や観客に新しい価値を届けようとしているのか。
一見すると、フィットネスマシンを開発・販売する企業がボディビル大会を主催することは不思議に思われるかもしれません。一般的にブランドは自社製品の普及や売上拡大を目的として活動します。しかし、DRAXが掲げる理念は、その枠を大きく超えています。
私たちが大切にしているのは「フィットネスの根幹」としてのボディビルを正しく伝え、その品格を高めること。そしてそれこそが、フィットネス産業全体を押し上げ、さらに多くの人々をフィットネスの世界へと導く最も確かな道だと信じているのです。
ボディビルは単なる筋肉競争ではありません。肉体を極限まで鍛え上げ、精神力と規律をもって挑戦するアスリートたちの姿は、フィットネスが持つ価値を最も純粋に体現しています。その姿が人々に感動を与え、憧れを生み、「自分も体を鍛えてみたい」という一歩を後押しする。まさにボディビルは、フィットネス文化を広げる「原動力」であり、「根幹」と呼ぶにふさわしい存在なのです。
だからこそDRAXは、単にマシンを届ける企業としてとどまるのではなく、産業の未来を築く「文化の担い手」として責任を果たしたいと考えています。ボディビルの舞台にふさわしい最高の環境を用意し、その魅力と価値を世界に発信すること。それは大会に出場するアスリートにとっても、観客にとっても、そしてこれからフィットネスに触れるかもしれない人々にとっても、大きな意味を持つ投資なのです。
さらに重要なのは、この挑戦が単なる企業イメージの向上や広告活動ではないという点です。DRAX CHAMPIONSHIPはスポンサーを持たず、純粋にDRAX自身の意思とリソースによって実現されています。そこには「業界全体を押し上げるために、まず自分たちが動く」という揺るぎない信念があります。ブランドの枠を超え、業界そのものを成長させたい――その想いが、DRAXをボディビル大会主催という道へと駆り立てたのです。
DRAX CHAMPIONSHIPは今年で5回目の開催となった。
このように、DRAXが大会を主催する理由は、自社の利益を超えた「フィットネス文化の発展」という大義に根ざしています。そしてその理念は、次に紹介するDRAX CHAMPIONSHIPの会場設計や運営方針に色濃く反映されています。
DRAX CHAMPIONSHIPを語るうえで、まず注目すべきは「総賞金1億ウォン(約1,000万円)」という圧倒的な規模の賞金です。しかも、この大会には外部スポンサーが存在しません。完全にDRAX単独で運営されるからこそ、選手に対して公平で純粋な舞台を提供できるのです。利益や広告の意向に左右されない環境は、アスリートの努力と情熱をまっすぐに評価するために欠かせません。
韓国最大規模の総賞金1億ウォンのDRAX CHAMPIONSHIP。その賞金額にもDRAXの想いが込められている。
大会の運営においては、公平さと尊厳を守ることを徹底しています。韓国ボディビル界のレジェンドたちを中心に構成された審判団は、経験と専門知識を兼ね備えた存在。その審査をさらに裏付けるのが、最新のリアルタイム電子審判システムです。判定が即時に集計され、観客や選手にも透明性をもって提示されるため、結果に対する疑念を残さない。スポーツとしての信頼性を支える仕組みが整っています。
DRAX CHAMPIONSHIPの審判団には韓国ボディビル界のレジェンド達が名を連ねる。
また、DRAX CHAMPIONSHIPは「競技」としての側面だけでなく、「舞台芸術」としての完成度にも妥協しません。巨大なFull LED電光掲示板がステージ全体を彩り、選手の姿を鮮やかに映し出す。高品質のサウンドシステムが緊張感と高揚感を演出し、照明と音楽が一体となって観客の心を震わせる。観る者を魅了するステージ構成は、選手のパフォーマンスを最大限に引き立てるための重要な要素です。
大会を一層特別な空間に仕上げるステージ演出は選手のパフォーマンスを最大限引き出し、観る者を魅了する。
選手がベストを尽くせる環境づくりにも力を注いでいます。効率的に設計された移動動線は、選手が余計なストレスを感じずに競技へ集中できるよう配慮されています。大会会場にはDRAX製マシンを揃えた専用のパンプアップゾーンを設け、出場直前まで理想的なコンディショニングを整えることが可能です。こうした細部にわたる配慮こそが、アスリートを主役に据えるDRAXの姿勢を物語っています。
DRAXマシンが並べられたパンプアップゾーンは選手のコンディショニングを整えるために重要な役割を果たす。
そして、この挑戦が生み出すのは単なる大会運営の革新にとどまりません。公正で華やかで、選手を第一に考えた舞台をつくることで、社会に新たな認識を広げています。「ボディビルは単なる趣味ではなく、真剣に取り組む価値のあるキャリアである」というメッセージです。選手たちの努力と成果を正しく評価する文化を育むことこそ、DRAXが目指す未来への布石なのです。
ボディビルが私たちに教えてくれる最も大きなこと――それは「努力は裏切らない」という真理です。
一朝一夕では変わらない身体が、日々のトレーニングと積み重ねによって少しずつ形を変えていく。その変化を自分の目で確認できる喜びは、何物にも代えがたい体験です。そしてその実感は、「自分は確かに成長できる」「努力すれば結果はついてくる」という揺るぎない確信となり、自己肯定感を育みます。だからこそ、多くの人がボディビルに魅了され、人生をかけて取り組む価値を見出すのです。
ボディビルは競技としての寿命も長く、若い世代だけではなく、60代になってもステージで輝き続ける選手も珍しくありません。肉体を鍛えることは、年齢を超えて挑戦できる普遍的なテーマであり、趣味としても、ライフワークとしても、一生涯続けられる活動です。自分の身体を作品のように磨き上げていく過程そのものが、一人ひとりの人生をより豊かにし、誇りを与えてくれます。
ボディビルは趣味としてもライフワークとしても年齢を超えて挑戦できるスポーツ。
DRAXは、こうした「努力の美しさ」を広く伝えていくことを使命のひとつと考えています。ボディビルを支えることで、フィットネス産業の発展に貢献し、より多くの人がトレーニングを通じて自信と健康を手に入れる未来を描いています。そして、この価値は決してボディビルという枠にとどまりません。夢や目標に向かって全力で努力する姿は、どの分野であっても人々を感動させ、周囲に勇気を与える力を持っています。
だからこそDRAXは、フィットネスマシンメーカーとしての立場を超え、「挑戦する人を応援するブランド」であり続けたいと願っています。
大会のステージに立つ選手だけでなく、日々ジムに通い体を鍛える人、健康を取り戻そうと一歩を踏み出す人――そのすべての努力が尊いものです。フィットネスは、ただ筋肉を強くするだけでなく、心を鍛え、人生に新しい可能性を広げてくれる。
私たちはこれからも、ボディビルを通じて、そしてフィットネスの力を通じて、挑戦する人々の背中を押し続けます。努力の美しさを、世界へ広める。そこに広がる未来こそ、DRAXが信じる「フィットネスの持つ力と可能性」です。